「雑司ヶ谷 いろはかるた」の「と」の札に「利家の孫姫が建てた鬼子母神堂」とある。 前号でも紹介 したが、永禄4年(1561) 1月16日に山本丹右衛門が清土の星跡 (文京区目白台の現清土鬼子母 神堂)から掘り出した鬼子母神像である。 村民が稲荷社のあった当地に天正6年(1578) 堂宇を建立。寛文4年(1664年)に 加賀藩第二代の藩主前田利常公の三女満姫(自昌院殿英心日妙 大姉)の寄進により本殿は建立されるのである。
徳川家一族としての満姫
さて、満姫とは、父方の祖父が前 田利家、母は徳川秀忠の次女・珠 姫である。 そして母方の祖父は二代将軍・徳川秀忠、祖母が江であるから、曽祖父が徳川家康ということになる。いわば徳川家一族として満姫 の寄進があるのは自然な流れであるのだろうか。
雑司ヶ谷の鬼子母神堂は、地元に強く根付いていき、庶民の力によって支えられていく。 また徳川吉宗の 時代以降も代々将軍家は鬼子母神堂近くの法明寺に御成し、秘仏の鬼子母神像が開帳されることもあったようである。
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「法明寺」にある小幡景憲の墓
雑司が谷法明寺に 「甲陽軍鑑」※ 原書を手に入れ、整理を進めた軍学者・小幡景憲の墓がある。
満姫は寛永12(1635) 年、徳川家光の養女として安芸藩主浅野家浅野光晟に嫁ぐ。 満姫の外祖父の徳川秀忠に仕え、また満姫の嫁ぎ先である安芸浅野家にも仕えた人物である。
※ 『甲陽軍鑑」
甲斐国の戦国大名である武田氏の戦略・戦術を記した軍学書。 信玄の側近として仕えた武将・ 高坂昌信の口述を昌信の甥である春日惣次郎らが書き残し、江戸期に入って小幡景憲が編纂してできたものといわれている。
取材協力：豊島区立郷土資料館 ※文中の鬼子母神の「鬼」の表記は正式にはツノ無しです。
（『とっぴぃ 豊島の選択 No.130』より加筆転載）
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