〜 富士フイルム設立に繋がる 「東洋乾板株式会社」〜その三
「南池袋遺跡」見学会
〜 としまの記録から日本・世界文化の記録へ 〜
ＮＰＯ法人「としまの記憶」をつなぐ会（平成24年結成）は豊島区を中心に、戦前・戦中・戦後そして現在の人々の日々の暮らしの「記憶」をひとつひとつ動画として「記録」する活動をしている。今年で結成11年目を迎えた。
さて平成29年に「学術社」社長・近藤重則さんのインタビュー動画の撮影をした。その時の話の中に、大叔父のである東洋乾板の創業者・高橋慎二郎さんの葬儀の時（昭和50年）、富士フイルムの役員たちがずらりと参列していたという話がある。
●雑司ヶ谷で東洋乾板を設立した大叔父と写真の関わり
https://movie.toshima-kioku.jp/archives/2017007/
●大叔父が設立した雑司が谷発祥の東洋乾板
https://movie.toshima-kioku.jp/archives/2017008/
東洋乾板の創業者・高橋慎二郎さんは、菊池恵次郎の支援を得て、大正8年2月11日、現在の東京都豊島区雑司雑ヶ谷に、東洋乾板株式会社を設立、取締役技師長となった。東洋乾板株式会社は、技術の向上を重ねながら、国産乾板を製造したが、大正15年の大日本セルロイド株式会社と提携、昭和9年に設立された富士写真フイルム株式会社に合併統合され、同社発足の礎となった。大正8年2月の東洋乾板株式会社の創立、同年9月の大日本セルロイド株式会社の創立をもって、「当社の歴史は、事実上、この年、この両社から始まった」（「富士フイルム５０年のあゆみ」）という。
令和4年8月6日に「雑司ヶ谷をもっと知ろう！」という夏のイベントで「富士フイルムの発祥の地は雑司ヶ谷だった」というお話会を企画。当初は、近藤重則さんにお話ししていだたくものだったが、生憎の都合により急遽、欠席せざるをえない状況となった。その後、講師を東洋乾板創業者・高橋慎二郎さんのお孫さんである高橋俊之さんにお願いする事となった。この話の流れの展開に、決して大袈裟ではなく、私はまさに奇跡を感じるほどだった。
真夏の一日。「お話会」には富士フイルムの多くのＯＢ達も参加。参加者は東洋乾板の工場・研究所があった跡地を見学した。路地裏も歩き、�犹┿淵�谷の水は素晴らしいものだった！�瓩噺世錣譴討い燭海箸�納得できるような生活に密着した、多くの古い井戸も見学した。
ある時、特定非営利活動法人 としま 遺跡調査会が「南池袋遺跡」の調査をしていると聞き、積極的に取材を試みた。調査という仕事をする専門家たちはなかなかつかまらずではあったが、そんな中、令和5年2月4日に、1日だけ遺跡の見学会が実施されることを知った。
当日は関心のある老若男女の長蛇の列に驚きながらも、東洋乾板の遺構を目の当たりにした時の感動と興奮は筆舌に尽くしかたい。
インタビューをした頃、近藤重則さんと雨降りの中、傘をさしながら「多分、このあたりでしょうかねぇ？」と当時は駐車場であった場所を歩いた事を思い出す。そして令和4年8月に創業者のお孫さんの高橋俊之さんたちと見た高層ビルの建設現場。目の前に広がる「南池袋遺跡」で東洋乾板の工場・研究所跡、トイレ跡も見た。そして関東大震災後か？土に埋もれた数枚の乾板を見た時、「ああ！乾板！」と頭の中はタイムスリップした。この日は多分、生涯忘れられないだろう「時間」である。
富士フイルムの発祥地が「雑司ヶ谷」だった！
動画「南池袋遺跡を探る」です。
https://www.youtube.com/watch?v=VB3AMJNSPY8
草創期の写真工業の息吹に感動 高橋俊之 この発掘調査では、 「南池袋遺跡」の名にふさわしく、 縄文時代の落とし穴や、 生け垣痕、 棚・塀の基礎の柱穴列、畑の畝列、 井戸、茶碗・徳利など江戸時代の遺物が出土したほか、 大正から昭和初期に建てられた東洋乾板株式会社の研究所の建物の基礎の遺構などが出土しました。 雑司ヶ谷の土地で営まれた先人たちの悠久の歴史に思いを馳せます。 昭和2年発行の東洋乾板ニュース第2号では、 新築された新工場と研究所の写真とともに 「吾国乾板製造上の権威たらしめんがために特に研究室を新築して、光学的諸器械、並に感光乳剤製造の最新様式の器具を完備し (中略)。 研究室上階は大ホールを設けて多人数の集会には適合して居るので写真界各種の催しには喜んで提供することになって居る。暗室も三箇所もあるが故に写真界の講話講演には十分の設備と言い得 るのである。」 とあります。 発掘調査で、まさに3つの部屋の基礎が土中から発掘確認されたのには、鳥肌立つ思いです。 私の祖父の高橋慎二郎は、 新潟から上京し、 各地を巡って写真師の修行をした後、 水と空気がきれいな雑司ヶ谷で、 大正3年に高橋写真乾板研究所、大正8年に東洋乾板株式会社を設立。 取締役・技師長として、難しかった写真乾板の国産化に苦労して取組み、実現しました。 「乾板」 とは、 写真フイルムができる前に、 感光乳剤を塗ったガラス板を写真機に取り付けて撮影したものです。 この会社は、昭和9年の富士写真フイルム株式会社の設立につながります。 東洋乾板の建物は、 同社の雑司ヶ谷工場として使われた後、戦後は、映画社の現像所や、日本初の人形アニメーショ ン製作会社が置かれたりしました。  昨年8月に、 「としまの記憶」 をつなぐ会から誘われて、 雑司ヶ谷の東洋乾板についてのお話会をさせていただきました。 ちょうどその頃に発掘調査が行われ、今回の見学会です。 としま遺跡調査会の熱心な調査担当の方ともお話ができました。 豊島区役所に勤める私の娘と見学に行ったのですが、 不思議なつながりを感じます。 東洋乾板についての詳しい資料は、 ホームページ 「高橋写 真フイルム研究所のあゆみ」 (https://takahashi.tokyo.jp) に掲載しています。 ＊としまの記憶 通信 No59号 2023年4月1日 寄稿文 |
＊日本写真発展史（１回〜３回）
➀日本写真発展史 http://www.edoshitamachi.com/modules/tinyd6/index.php?id=17
➁日本写真発展史 http://www.edoshitamachi.com/modules/tinyd6/index.php?id=18
�Ｆ�本写真発展史 http://www.edoshitamachi.com/modules/tinyd6/index.php?id=19
＊雑司ヶ谷で生まれた写真技術 〜高橋写真乾板研究所・東洋乾板物語〜
http://www.edoshitamachi.com/modules/tinyd6/images/2023_03/2023_03.pdf
取材協力：豊島区立郷土資料館
取材協力 ：写真提供: 特定非営利活動法人としま遺跡調査会
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