〜 富士フイルム設立に繋がる 「東洋乾板株式会社」〜その一
2003年に都道環状第5の1号線の工事の時に発見された「南池袋遺跡」は江戸時代を中心とする遺跡である。江戸時代この地域は雑司ヶ谷村の一部であり、江戸時代の村絵図と見比べても江戸時代の主な道路や神社は現在も残っており、当時の様子を想像する事ができる。
さて、2021年8月から市街地再開発 （開発約17000平方メートル)に先立ち緊急発掘調査 (約11000平方メートル)が実施されたが、江戸時代からの雑司ヶ谷村様子が少しずつ解明されており近代の遺構も発見された。
雑司ヶ谷の豊富な水の水質の良さから、富士フイルムの発祥の地である「東洋乾板」が設立された内容を、雑司ヶ谷物語〜日本写真発展史（１回〜３回）に紹介した。
大正3 (1914)年に、高橋慎二郎が「高橋写真乾板研究所」(東京府北豊島郡高田村雑司ヶ谷114番地、現在の豊島区南池袋4丁目23番)を設立したその後に、菊池恵次郎氏の出資を得て、大正8 (1919)年2月11日に「東洋乾板株式会社」が設立された。
その場所(東京府北豊島郡高田町大字雑司ヶ谷626 (現在の東京都豊島 区南池袋2丁目40番)は今回発見された遺構の場所である。人に記憶があるように土地にも記憶があるように思える。とくに遺構の発見で 歴史を目の当たりにして、その想いはより強くなる。
▲「東洋乾板俯瞰図」昭和4 (1929) 年、大日本セルロイドの資金援助を受けて昭和2(1927)年、工場の増設を行い2階建 ての乾板工場と研究所が設けられた。
水不足を防ぐために深さ約8メートルの給水井戸と深さ76メー トルの繋泉が掘られた。
富士写真フイルム(株) 「50年記念誌」 より
東洋乾板株式会社とは ？・・・日本写真の歴史は幕末に輸入された湿板写真で、これが幕開けとなり写真技術は発展する。
明治16年にイギリスから乾板写真が輸入されるものの高温多湿の日本では乾板の工業化、 事業化はかなり難しいものであった。そんな中、写真乾板の国産化に向けて、大正3年に高橋写真乾板研究所、大正8年、「雑司ヶ谷」でわが国における写真用乾板の工業化に先鞭をつけたのが東洋乾板株式会社(創業 者・高橋慎二郎)である。 その後、高橋写真フイルム化学工場、高橋写真フ イルム研究所を設立し、長男の真一、 次男の清とともに、写真フイルムの開発研究を重ね、開発に成功、富士フイルム設立の直接の母体となったのである。
ガラス乾板とは ？・・・無色透明の平らなガラス板に、写真感光材を塗布したもので写真乾板、または乾板と呼ばれる。乾板が登場する前の写真撮影術は、19世紀半ばにイギリスで発明された、コロジオン湿板法という方法が主流であり、感光板を薬品で濡れた状態で撮影するこのコロジオン湿板法に対し、ガラス乾板は乾いた状態で撮影することができたため乾板と呼ばれた。ガラス板からセルロイド素材の シートに変わったものが、私たちにはなじみ深い写真フィルムである。 つまり構造自体はガラス乾板も写真フィルムも大きな違いはない。
＊日本写真発展史（１回〜３回）
➀日本写真発展史
http://www.edoshitamachi.com/modules/tinyd6/index.php?id=17
➁日本写真発展史
http://www.edoshitamachi.com/modules/tinyd6/index.php?id=18
�Ｆ�本写真発展史
http://www.edoshitamachi.com/modules/tinyd6/index.php?id=19
＊雑司ヶ谷で生まれた写真技術 〜高橋写真乾板研究所・東洋乾板物語〜
取材協力：豊島区立郷土資料館
取材協力 ：写真提供: 特定非営利活動法人としま遺跡調査会
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