豊島区を通過する鎌倉街道・中道は新宿区西早稲田から神田川を面影橋で渡り豊島区内に入り宿坂を経て雑司ヶ谷鬼子母神堂の東側に抜けて北上するとされていた。
さて、正徳６年（１７１６）年に描かれた 「武州豊島郡下高田村図」を見ると、左右にのびているのが神田川で、ここにかかる橋が、現在の面影橋であるが、図中には、 「大橋」 とある。
この大橋から上に伸びているのが鎌倉街道であると言われる。
図の中央を南北に貫いている道の「金乗院」付近から上方向に宿坂（しゅくさか）があり、図の道の上には天地逆に「上宿」（かみじゅく）と書かれている。つまりこれはこの付近に宿があったことを示唆している。
一方、南蔵院の北側で東に折れ、 たあたりには「中宿」(なかじゅく)と記されている。図には書かれていないが 「中宿」と 現豊橋（ゆたかし）に向かう道の間に「下宿」(しもじゅく）があったと推測される。
この「下宿」地名は早くに失われたのではないかと考えられるが、神田川近くに、「上宿」 「中宿」「下宿」で構成された宿町であったと思われる。
これが神田川の渡河点(とかてん)に成立した豊島区内で最も早い時期の町場(まちば)であり、高田という地名から「高田宿」と呼ばれたのである。
▲（部分） 正徳6年」（武州豊島郡下高田村絵図
東京都公文書館所蔵
取材協力：豊島区立郷土資料館 （『豊島の選択』より加筆転載）
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