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能楽は古くは猿楽(さるがく)と言って、社寺の祭礼にともなっておこなわれるものでした。そのため古い社寺に能面が伝わっている例もしばしばみられます。南北朝時代、春日社と興福寺で猿楽を勤めた結崎座(観世座)(ゆうざきざ(かんぜざ))・外山座(宝生座)(とびざ(ほうしょうざ))・坂戸座(金剛座)(さかどざ(こんごうざ))・円満井座(金春座)(えんまんいざ(こんぱるざ))を大和猿楽四座(よざ)といいます。 このうち結崎座に観阿弥(かんあみ)、世阿弥(ぜあみ)親子が出、室町幕府第三代将軍である足利義満の寵愛を受けて、世阿弥が能楽を芸能として大成しました。そののちも歴代将軍によって能楽は愛好され、やがて武家の式楽(しきがく)として各地の大名も能を催すようになりました。 大和猿楽四座のうち坂戸座(金剛座)から喜多(きた)が分かれ、ここに現在の能楽シテ方宗家がそろいます。これら宗家には、能楽の演目と演出にあわせて工夫された面が備えられました。南北朝時代から室町時代にはあらたな曲がつぎつぎ作られ、面の種類も増えてゆきました。いわば創造・創作の時代と言うことができます。この時期に作られた面は造形的な魅力に富み、本面といってきわめて尊重されます。安土桃山時代以降の能は型を伝える模倣・写しの時代となり、能面も本面の模作が中心となっていきます。模作は形や彫りだけでなく、傷や彩色の剥がれた様子も写すところに大きな特徴があります。 東京国立博物館は200面を超える能面を収蔵しています。このなかには金春家に伝来した由緒ある面も含まれています。今回の特集陳列では、これら館蔵品に和歌山・根来寺(ねごろじ)のご所蔵品をくわえ、創作の時代である室町時代の面とともに、「雪の小面(こおもて)」をはじめ、本面の写しとみられる能面を展示いたします。本面とその写しがどのように展開していったのか、その様相をご覧いただけたらと思います。どうぞ幽玄なる能面の世界をおたのしみください。 詳しくは |